Rollei35Sの修理
- 宮越写真機修理店
- 14 分前
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1974年に登場したRollei35Sです。
先に書かせていただいたローライ35(tessarレンズ)と同じくローライ35シリーズとして当店ではご依頼数の多いカメラとなっております。
大きな違いは搭載されたレンズです。
tessarは40mm F3.5、3群4枚の構成ですが、高級モデルとなる35SはSonnar40mmF2.8、4群5枚構成のレンズが搭載されています。
開放値だけを見ると半段の違いではありますが、フォーカスは前玉回転式のTessarに対しSonnarは直進ヘリコイドによる前群繰り出し式となっています。
レンズのコーティングの違いもあり、描写はそれぞれに良さがあるレンズです。
直進ヘリコイドが設けられたことにより、鏡筒も大きく異なります。
Tessarが筒そのものの鏡筒に対し、Sonnarでは内側にヘリコイドのネジ山が切られているのを見ていただけると思います。
レンズ構成も異なるため鏡筒の長さにも違いが見て取れます。

内部の鏡胴も前玉周囲に鏡筒と対になるヘリコイドが設けられており、絞り羽根やシャター羽根と二階建ての構造になっています。
整備の際にはグリスの選定も重要な個所となります。
ヘリコイドからオイルが滲み出てしまえばすぐに絞りやシャッター羽根に影響が及びます。

油滲みし難い安定したグリスでありながら、ヘリコイドがスムーズに動く稠度が求められます。
また、組み立ての際にも羽根とヘリコイドの近さは注意が必要です。
綺麗に清掃したレンズやシャッター羽根周りにグリスが付着しては整備した意味がなくなってしまうため、
グリスの管理、組み立ての手順が重要となります。
前回「Rollei35」の修理ブログで書かせていただいた通り、Rollei35Sをはじめ生産拠点がガポールに移ってからのファインダーはドイツ製のファインダーと構造が異なります。
ガラスブロックで出来ていたドイツ製に対して、シンガポール製ではプラスチックの枠にレンズがはめ込まれて固定される構造となっています。
対物レンズはプラスチックの枠を溶かしカシメているため、清掃の取り扱いが出来ないとされることが多くあるそうですが、知見のある修理店ではカシメを壊さずにレンズの取り出しを行っています。
当店でももちろんファインダーはレンズを全て取り出して清掃が可能です。

シャッターボードも取り出して整備を行っていますが、こちらの個体ではシャッターは日本のコパル製と思われる仕様となっていました。
copal製シャッターではシャッターボードの右下に「copal japan」とシールが貼られているのですが、おそらく過去の何らかの整備の際に剥がされたのではないかと思われます。

Rollei35シリーズは生産期間が長く、個体数も多い人気機種のため、その他ネットで紹介されていない細かな違いは多数あります。
修理の話しを続けると、
メーターコイルの交換が必要となる修理も時折遭遇いたします。
現在までお取り扱いを行っていて感じるのは、メーターの破損はシンガポール製よりもドイツ製が多い傾向にあることです。
そもそもコイルの破損自体が少ない故障ですし優劣があるわけではありません、露出計の故障の大半は受光素子(CdS)の劣化や電池室からの腐食による断線等によるものです。
それよりも一番問題になるのが、古い劣化した電池の膨張や液漏れにより、プラスチック製の電池室が割れていたり、液漏れに曝された樹脂素材自体が劣化して破損しているケースです。
破損が軽度な物は修復を行っていますが、亀裂が縦横に入り細かく割れている電池室は再生を行うことが出来ないため、メーターコイル同様に交換を行う修理となります。
樹脂部品の劣化こそ洋の東西問わず古い製品の宿命的な部分です。
Rollei35をはじめ、ご依頼いただいたお客様のご感想を掲載させていただいております。
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