OLYMPUS XAの修理
- 宮越写真機修理店
- 6月27日
- 読了時間: 6分
更新日:7月5日

1979年発売のOLYMOUS XAです。
「小さく軽くポケットに入れても気にならないカメラ」というコンセプトのもと、バリアー式のレンズカバーを採用することでケースレスを実現し、高い携帯性と速写性に加え、内蔵距離計、絞り優先AEなど、多彩な機能を満載したコンパクトカメラの名機です。
(オリンパスグループ企業情報サイト カメラ製品 より抜粋)
先回取り上げたAgfa OPTIMA 1535 と同年代のカメラとして、また、ブラックボディに赤い挿し色が使われている類似性のあるデザインのカメラとしてOLYMOUS XAの修理について取り上げたいと思います。
絞り優先AE(10秒~1/500秒)、レンズはF.Zuiko 35mm F2.8、フォーカシングによってレンズの全長が変わらないインナーフォーカスを採用することでレンズがカバーと干渉すること無くいつでも開閉が可能となっています。
コンパクトフィルムカメラやデジタルカメラでもレンズにスライドカバーが付いているカメラは多くありますが、その元祖となるのがこのXAです。
カメラ部門初のグッドデザイン賞を受賞したカメラです。

またXAはコンパクトなボディにレンジファインダーを搭載していることも人気となっている理由の一つです。
「プロがサブカメラとして使える性能」と言われた通り、レンジファインダーと絞り優先AEがあれば大抵の状況に不便することはありません。
シャッターボタンもそれまでのカメラと違い、ストロークがほとんど無い感圧センサーによるフェザータッチボタンとなっています。
軽く小さなカメラなだけに、手ぶれを起こさない為の機能と言えます。
XAシリーズ各機種ご依頼いただいておりますが、やはり多いのは今回投稿の初代(無印)とXA2です。
ご依頼の多くは
「電池を入れたけれど全く動かない。」
「バッテリーチェックは確認出来るのにシャッターが切れない。」
「シャッターは切れるのにシャッター速度が変わらない。」
の三通りに分かれます。
それぞればらばらの症状ですが電子制御カメラなだけにどの故障も電気に関連してカメラの作動のどこまで制御されているかの違いとなってきます。
上の状態を原因に置き換えていくと
「電池室からの電源供給に問題がある。」
「電源は供給されているがシャッターボタンもしくは開き側制御に問題がある。」
「シャッターが開くところまでは制御されているが、シャッター羽根の閉じ側タイミングが制御されていない。」
となります。
更に細かく、分解前の状態でもカメラの僅かな動きの違いで故障状態を判断することができます。
電子制御カメラはあれこれ試しにいじって解決する、という部類のカメラではありません。
故障の状態別に原因箇所や対処法を心得ている必要があります。
修理後の調整段階でも、カメラには調整用の半固定抵抗が並んでいますが、その中には定められた位置に置いておかなければならない抵抗もあるので知識も必要になります。
電子制御カメラとはいっても、シャッターはシャッター羽根が物理的に動きますし、絞り羽根やピントレバーもあります。
経年による整備も他のカメラと同様に必要となっています。


また、ネット上さまざまなブログや修理記事などで、XAのファインダーメーターについて書かれたものを見ることができますが、XAには光量を測るCdSが並んで二つ付いています。
一つはカメラの露出を制御するためのもので、もう片方がファインダーのメーター用のCdSです。
同じ減光板の下に並んでおり、更には使われ方に違いがあるので、CdSの特性も劣化状態も異なっています。
そのためカメラによっては実際のシャター速度とファインダーメーターが指す値に大きな差が生じていることがあります。
実際、修理でお預かりするXAの内、8割はメーターがズレている状態となっています。
ズレ幅も劣化が顕著な個体では実際のシャッター速度と3段以上開いている状態です。
メーターのズレは多くの修理店で調整不能や出来る限りの調整と可否を曖昧にしていることが多いのが現状と思われますが、
当店ではカメラ個々の状態に合わせてファインダーメーターの調整を行っております。
ボディサイズの小さいXAは内部にもスペースが無いため、メーターの調整は一般的なカメラの露出計の修理よりもとても手がかかります。
また、劣化しているCdSの全てが調整可能という訳ではなく、調整不能となる限界値もあるため、その際にはCdSを交換した上で、今度はその交換したCdSで適正値が出るように調整を行っています。
先に書いた通り、多くのXAで大なり小なりCdSの劣化を抱えているため、移植交換を行えばそのまま適正値が出るわけではなく、精度を出すには調整が必要となっています。

細かく適正値を追って行っても、解消できない誤差が残る場合もあります。
その際に当店ではシャッター速度の上限の組み合わせを優先して精度が出るように調整を行っています。
XAは絞り優先オートのカメラなので、通常の使用ではシャッター速度の上限の使用頻度が高くなります。
解消出来ないメーターの誤差は低速側に持って行った方が実用性が高いと考えているためです。
具体的には、最高速の1/500が前後にズレていたら性能に直結してしまいますが、1/1に多少誤差があったとしても許容範囲として使用しやすいといった状態です。
カメラそのものの修理では、シャッター速度が一定で変化しない故障が一番問題になります。
過去の例からいくつか原因を上げられますが、その多くが基板を交換しなければ直りません。
電気的に部品が故障モードになっているケースはほぼありませんが、物理的に基板が損傷していることがほとんどの原因です。
基板の損傷の例として電池室からの水素ガスに起因する腐食がシャッターの閉じ側配線に広がっている写真を掲載しておきたいと思います。
腐食ガスが閉じ側のソレノイドの根本をボロボロにしている様子をご覧いただけると思います。
カメラの電池室の蓋に小さな穴が開いている物がありますが、水素ガスを逃がすための穴となっています。
通常では小さな穴で十分なほど微量で問題になる危険性も無い水素ですが、長期間放置されていたり、電池の液漏れを伴っている場合には腐食がマイナス端子から広がっていきます。

また、基板やシャッターボードの故障以外にもXAはインナーフォーカスのフロートが固着するトラブルが多くあります。
長年使用されていなかった場合に鏡筒内で茶錆が発生してフォーカス部分がびくともしない状態に固着してしまいます。
これを無理矢理動かそうとしてもフォーカスが動く事は無いため、ピントレバーと鏡筒の接続部分でプラスチック部品を破損させしまいます。
XAに限らず、無理な操作は状態を悪化させてしまいますので、故障が疑われる際にはご相談いただけましたら幸いです。

OLYMPUS XAをはじめ、ご依頼いただいたお客様のご感想を掲載させていただいております。
修理のご依頼、故障のご相談はお問合せフォームよりお気軽にご連絡ください。
宮越写真機修理店「カメラ修理ブログ」トップページ
Comments