OLYMPUS OM-1の修理
- 宮越写真機修理店
- 7月2日
- 読了時間: 5分
更新日:7月5日

1972年発売「OLYMPUS OM-1」です。
正確には72年に発売されたのはM-1で、OM-1の名前では1973年よりとなっています。
「M」一文字と数字の組み合わせのカメラ名がライカからクレームを受け「OM-1」となったのは有名な話しです。
それまでPenシリーズ、PEN-F,FTの成功から「ハーフサイズのオリンパス」と言われていたオリンパスが35mmフルサイズ一眼レフとして、更には当時世界最小軽量の一眼レフとして発売したのがこのOM-1です。
先回書かせていただいたOLYMPUS XAに続き、オリンパスのOM-1を投稿させていただきます。
オリンパスのカメラでは技術者の米谷美久氏の名前が合わせて語られています。
国内メーカーでは技術者の名前が前面に出ることはあまりありませんが、氏の手掛けたPenシリーズ、PEN-F,FT、OMシリーズ、XAは全てが独創性のあるカメラで、また全てがオリンパスを代表するカメラです。
OM-1の登場はそれまで重く大きい事が当たり前だった一眼レフが小型化へ進む転換点となりました。
OM-1発売ののち1976年に発売されたPENTAX MXがOM-1よりも更に0.5mm小さく設計され、競って発売されたことも有名です。
修理業者としては、カメラ修理と言えばOM-1であり、また逆にOM-1が完璧に直せるならば修理屋ができると言われたカメラです。それだけ人気があり生産数も多かった製品です。
修理の面では
○電池室の接点固定部の破損や腐食による通電不良。
○プリズムの腐食。
○チャージギアのズレ。
など、いくつか特徴的な不具合があります。
また、過去に先達から教えていただいた内容も含まれるため具体的に言及は出来ませんが、OM-1は注油を行ってはならない箇所の指定もあり、合わせて整備の初期段階で各部を清掃する際にも他社製一眼レフよりもカメラを侵さない方法で行っています。
ネットの情報には様々ありますが、基本的には動かなかったカメラに油を注せばば動くようになるのは当たり前のことです。
ですがそれだけでは根本的な解決にはなっていませんし、今回のOM-1に限らず弊害といったものもお見受けされます。
修理後にお客様からカメラの状態を一番感じてもらえる一つはシャッター音です。
OM-1はミラーの跳ね上がるスピードを抑制するエアダンパー(ミラーブレーキ)を備え、シャッター音が静かなことでも有名ですが、残念ながらエアダンパーとは別に設置されているゴムダンパーの劣化により「カーン」と甲高く金属音が響いている個体がほとんどとなっています。
ゴムダンパーと言えばPENTAX ME系の不具合でもよく登場しますが、OM-1はミラーボックスのゴムダンパーの影響で不動になるまでにはいたりません。
写真を撮る上で直接的な機能には影響が無いため、交換が行われないことが多くある箇所です。
そのためネット上でも紹介例の少ない修理ですが、ひと手間の違いが使い心地に影響してきます。
写真から劣化して崩れている飴色のゴムを見ていただけると思います。
届かない奥にも同様のゴムダンパーがある為ミラーボックスの壁面を外して劣化したゴムを交換します。
各部の整備と合わせ修理後では「シャコン」と軽く小さな音に戻す事ができます。
ゴムダンパーの交換はご依頼いただいたOM-1全てで、整備のご費用内にて行わせていただいております。

※矢印の先に半分に崩れた飴色のゴムダンパーが残っています。

※ミラーボックス壁面を外し、劣化に強いゴムダンパーへ交換後の写真。
矢印の先、三ヶ所。
オリンパスグループ企業情報サイト カメラ製品 OM-1の項を見ると
『OM-1を生産するにあたり、軽量化のため用いる鉄素材に対する防錆技術、ペンタプリズムの加工技術、耐久性を高める熱処理や表面処理技術など、さまざまな面の社内技術が、大きく向上、発展しました。』
と説明されている通り、カメラ内部の部材や構造を見ても各所に工夫が見て取れます。
ペンタプリズムもコンデンサーレンズと一体化され、プリズムの底面が凸レンズの形状となっていることで省スペース化を図っています。
また、通常の一眼レフでは巻き上げレバーの隣にシャッターダイヤルがあり、ダイヤル直下に調速機構がありますが、階層状に多段構造となっている調速機構を、OM-1では平たく並べてミラーボックス下に薄く収めています。
カメラを正面から見た時に幕軸の左上で連結し制御している機構を、幕軸の右下に並べ替えて連結させている形です。
カメラを設計した米谷美久氏がいかに機構や構造に熟知しておりモジュールを再配置するかのように自由に移動させる発想力を持っていたかがうかがわれます。

カメラ左上には巻き上げレバーとその基部しかなく、
調速機構は右下(ミラーボックス下)に収まっている。

それでも半世紀が経過した製品となっているため、各部の経年の整備の必要性や、また製品そのものとしても樹脂部品に劣化が見られる個体も多くあります。
OM-1で代表的な不具合のプリズムの腐食も交換が必要となっています。
現在でも適切に修理することで性能を取り戻すことは十分に可能なカメラです。
OM-1独特のシャッター音をぜひまたお使い下さい。
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