Rollei35の修理
- 宮越写真機修理店
- 5月30日
- 読了時間: 6分
更新日:6 日前

1967年に発売されたRollei35です。
ツァイスのレンズにコンパーシャッター、ゴッセンの露出計と豪華な取り合わせを極めてコンパクトに収めたローライのカメラです。
当店では一番ご依頼数の多いカメラです。
Rollei35は搭載されたレンズの違いや派生機種などのシリーズがありますが、こちらの投稿ではTessarレンズのRollei35を中心に取り上げたいと思います。
Rollei35に搭載されたTessarは焦点距離40mm、開放値はF3.5のレンズです。
F3.5を物足らなく感じる方もいらっしゃいますが、大口径開放主義的なスペックで語るカメラではありませんし、Tessarレンズはシャープさと階調のバランスがとても良いレンズです。
後に登場するRollei35Sは開放値F2.8のSonnarレンズが搭載され、カメラを正面から見ても大きな前玉が目をひきます。
TessarはSonnarに比べて鏡筒もスリムで全長も長く、シリーズ当初のモデルだけにスマートな印象を受けす。
個人的にはRollei35はF3.5が必要十分だと思っています。
完全機械式のカメラですが、外光式のCdS露出計が搭載されています。
そのため撮影機能の機械的な故障の他に、露出計に関するご依頼も多いカメラです。
電池室の腐食や断線で不動になっている物や、露出計の精度不良など、全て修理を行っています。
劣化したCdSの交換は定番ですし、メーターの交換が必要な場合もあります。
Rollei35は比較的分解しやすいカメラとなっているため、趣味で分解されたカメラも多く出回っています。
露出計も同じで、プロの修理ではない様子のカメラは珍しくありません。
慣れない手で作業した物なのか、腐食した接点の交換や半田付けなどでプラスチック製の電池室が溶かされてしまっているカメラが見受けられるのは残念なことです。
腐食による通電不良や断線修理は修理店では日常的な作業のため、電池室を溶かすことはまずありませんし、作業の良し悪しがはっきり見て取れる部分でもあります。

※画像右が当店で接点の付け替えを行った電池室です。
レンズやシャッター、絞り羽根の整備と合わせて沈胴緩衝材の整備も重要となります。
沈胴鏡筒にはフェルトが取り付けられており、緩衝材として、また遮光材として重要な部分です。
フェルトがヘタって沈胴がスカスカに抜けていると鏡筒が擦れて傷つくだけでなく、沈胴操作の際に光漏れが発生します。

レンズやシャッター周りは正常に作動していても整備を行っています。
Tessarレンズはオーソドックスな前玉回転式なのでシャッター羽根とヘリコイドに隔たりがありますがSonnarレンズは全群繰り出し式となっているため、ヘリコイドと羽根類が間近にあり、清掃後の綺麗な状態からグリスを管理して組む必要があるからです。
またヘリコイドの組み立ての際に、当店では目測機のピントリングは感触的に許容出来る範囲で重めが良いと考えております。
パンフォーカスに設定した撮影でも、ピントリングで距離を慎重に設定した場合でも、その後ちょっとしたことで簡単にズレてしまうようでは目測機として不便です。
お預かりの際には「気持ち良く多少重め」に調整させていただいております。
スローシャッターがバルブと同じに切れてしまう不具合や、その逆にバルブがスローと同じく切れてしまう不具合もRollei35では良くある故障です。
その他巻き上げ不良、巻き戻し不良、不具合は多種に及びます。
カメラにとってファインダーも重要な個所です。
ドイツ製Rollei35のファインダーは対物レンズとガラスブロック+接眼レンズの貼り合わせを布テープで巻いて固定されています。
そのため内側に汚れが着く事はありませんが、テープの粘着剤が経年によりレンズへも広がり出ている事は多くあります。
ファインダーが綺麗か否かは使い心地に大きく影響するため、面倒でも一度剥がして貼り直します。


製造がシンガポールに移ってからはファインダーは簡素化されてガラスブロックが無くなり、対物側が平凹レンズ×2の構成、間隔を開けてブライトフレームが蒸着されたガラスプレートと凸レンズの接眼レンズに変わります。極一般的なアルバダ式ファインダーのレンズ構成です。
ドイツ製に比べ空間がある分汚れやカビの発生も多くなる上、対物レンズはプラスチックの枠を溶かしカシメて固定してされています。
カシメのある構造から、シンガポール製のファインダーは清掃が出来ないと思われている方もいらっしゃいますが、造りに適した分解方法があります。
話しが飛びますが、同業者の友人がある時こんなことを言っていました。
「カメラ修理は方法論では無く、結果論だ。」と。
どんな簡易的な方法を用いても、傍から見て作業が不足しているように見えたとしても結果それがきちんとした整備状態に繋がっているのなら、それらは修理として是だ。
とのことで、確かにどんなに手を尽くしたからといっても、
またご依頼を受けている商売としても結果が全てということに違いはありません。
ただその言葉には続きがあって、
「カメラ修理は結果論なのだが、巷に溢れている怪し修理は結局その結果も伴えていないことが
大きく問題だ。」と続けていました。
そんな怪しい修理は別として、方法論も様々にあり、
そもそもカメラは出来るだけ分解すべきではないとする論もあります。
「分解したことによって組み立て時に精度出しが必要となり、分解するから再調整しなければならなくなる」
分解された経緯が無いカメラも珍しくいなっていますが、分解しなければメーカーの製造時の状態がカメラに残っていることも事実です。
小人がカメラの隙間に入って修理してくれるならそれが本当に一番でし、バラさない修理とはそう言った結果を得るためのものです。
ただ現在では方法を問わずとも、カメラの各部が経年により整備を必要としています。
分解しては組み立て調整することは手間のかかる方法ですが、当店ではそれが一番確実な方法と考えて作業を行っています。
逆もしかりで、
修理業者は皆カメラが良い状態になることを目指して修理を行っているため、結果を目指す方法も同じところに行きつくことが往々にしてあります。また、良い方法は様々に引き継がれています。
シンガポール製のファインダーの分解方法もその一つかもしれません。
レンズの取り出し方法を知っている人の分解跡がカメラから出てくると、過去の整備状態に安堵する時があります。
ファインダーはカシメを無理やり解くことなく十分に清掃可能です。
露出計用の代替えCdSも約二種類が同様にみられます。
最後にカメラの外観についてですが、
Tessarレンズにはピントリング前面に化粧板が取り付けられています。
プラスチック製の化粧板は経年劣化で収縮していることも多くあり、収縮で反り返って正常に取り付けられない品物も珍しくありません。
過去にはその化粧板を作成したこともありました。
写真を撮る機能には関係ない部分ですが、カメラの顔が綺麗であってほしく思うのは修理する側も同じです。
また、プラスチック製の巻き上げレバーの当たり受けは常時補充している部品です。

Rollei35をはじめ、ご依頼いただいたお客様のご感想を掲載させていただいております。
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