「カメラを修理する」ということ

数年前のこと。
春も終わりに近づいた良く晴れた日の夕方、
お一人でゆっくりカメラを構えるご老人に会いました。
杖を手にしながらも背筋の凛とした方で、
遠くを見据えて一呼吸おくとすっとNikon S2を構える。
カメラを降ろされたところに声をかけさせていただくと、 少しお話しを聞かせていただけた。
「あ、ええ、これはね」 「普段、私も仲間と出かけるときはデジタルなのですがね」 「こういうのでは撮るのに時間がかかってしまうでしょ」 「みんなデジタルだとそれではね」 「今日は一人だから、古いのを虫干しにね」 「春の今頃が良いんですよ」 Nikon S2はお兄さんから頂いたものだそうで そのときから二重像も壊れているとの事、
目測とカメラに付けたVCメーターから露出を拾って ゆっくりシャッターを切られていました。 今でも時折思い出します。
年月を経過したカメラにはもちろんその年月分、誰かの思いが詰まっているということ。
そして今はそんなカメラをお預かりする立場になったこと。
誰かが写真を撮る瞬間裏方としてどこまで力になれるか。
静かな真剣勝負です。
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